2021年シーズン、39本塁打を放ち、ヤクルトスワローズをセリーグ優勝・日本一に導いた村上宗隆選手。
そしてその翌2022年にはさらに進化を遂げ、シーズン本塁打日本人最多記録を更新する56本の本塁打を放ち、令和初・史上最年少の三冠王に輝きました。
村上宗隆選手のこの驚異的な成績は、その打ち方に秘められています。
シンプルな打撃理論と研究心、そしてその体現へ向けた地道な努力から来ています。
村上宗隆選手はどちらかというと打席に静かに立ち、微動だにしないでバットを構える、野武士のようなその打ち方が印象的です。
様々な野球評論家が村上宗隆選手の打撃を分析していますが、本人の口から直接語られた打撃に関する考え方などを中心に紹介していきます。
村上宗隆選手の打ち方
「身体の中で打つ」こと、ヘッドは「返す」のではなく「返る」
村上宗隆選手がまず工夫したのは、バットを構える位置でした。
バットは頭の横で構えるのではなく、左肩のやや後方で構えるとのことです。
そうすることで、スウィングした時に、ちょうど「身体の中」で球を弾く感覚が生まれるとのこと。
逆に、顔の横で構えると、体の前の方で球をとらえてしまい、遠くへ飛ばすことができないことに気づきました。
この「身体の中で打つ」ということが体現できるようになると、バットのヘッドは返そうとしなくても自然な良い形で「返る」というのが村上宗隆選手の考え方です。
バットはヘッドの方が重たいため、手首を返して打つと「手打ち」になってしまいます。
そうなると、相手の速球に押し込まれ、球をひっかけてしまいますね。
理想のスイングができていれば、ヘッドは勝手に返るので、理想のスイングにつながります。
バットをやや後方に構え、左肩を残し、相手投手に胸を見せないよう身体を開かないこと。
理想のスイングを続けていれば、ヘッドは自然と理想の形で返ること。
この心がけをもとに毎日バットスィングを繰り返し、身体で覚えていきました。
練習も常に全力で。全力でできないところでやめる
村上宗隆選手は「練習は常に全力でやりたい」と言っています。
打撃練習も、素振りも、いつも全力で真剣に取り組みます。
その積み重ねが、プレッシャーのかかる場面でも迷わず自分の打撃を貫くことにつながっています。
一方で、「全力でできなくなった時がやめ時」とも話しています。
できるところまでは全力で、全力でできなくなったらやめる。
とてもシンプルな考え方ですね。
この練習スタイルは、プロになってからも続けているそうです。
限界を超えていくことよりも、限界を知ることが大切。
村上宗隆選手の信念は人生の格言にもつながりそうです。
目標をもって、毎日続けることがとても大事
村上宗隆選手は「目標を立てて、毎日続けることが大事」と語っています。
限界を超えてまで練習し、フラフラになって翌日は休む、では意味がない。
限界を感じたらストップし、また翌日同じことを続けることの方がずっと大事だと言っています。
継続の力は、何を行うにしてもとても大切です。
常人離れしたことを無理して行うよりも、小さなことでも日々コツコツと積み上げていくことを怠らない。
村上宗隆選手が高校時代から守り続けてきた練習スタイルです。
その習慣の継続が、56本塁打をたたき出すこのスイングを支えているのですね。
中距離打者用のバットで本塁打を量産
村上宗隆選手が使用しているバットは880~900グラムほどです。
通常、長距離打者はグリップの細いハンマー対応のバットを好んで使用します。
しかし、村上宗隆選手はグリップが太め、アベレージヒッター用のミドルバランス型のバットを使用しています。
ちなみに、ヤクルトスワローズの先輩、青木宣親選手が同じタイプのバットを使用しています。
当初、リーグ最下位だった打率をなんとか向上させたいという思いがあったから、と言われています。
このタイプのバットの方が、村上宗隆選手が日々考える打ち方とうまくかみ合ったのかもしれませんね。
打撃理論が体現した2022年シーズンは驚異的な成績を残す
村上宗隆選手は2022年には.317、56本塁打、132打点で史上最年少の三冠王を獲得します。
さらに、5打席連続本塁度という日本新記録も樹立しました。
その5本の本塁打の方向も、右へ2本、左へ3本と広角に打ち分けています。
村上宗隆選手は2022年シーズン前にバットの構えをやや下に下げて臨みました。
より力強いスイングで、球を遠くへ飛ばすポイントを考えた結果なのでしょう。
ヤクルトスワローズの大先輩、評論家の若松勉さんも
「バットがスムーズに出ている。色々なボールに対応できる。」
とその打ち方絶賛をしています。
村上宗隆選手の打ち方は?【まとめ】
天才は凡人には理解しがたい才能と知能を有していると言われます。
しかし、村上宗隆選手の打ち方に対する考え方はいたってシンプルです。
その考え方を実現させるために、ひたむきに努力を重ねてきました。
村上宗隆選手がこれほどまでの成績を残せた理由は、明確な理由に基づいたひたむきさにあると思われます。
常に自分の打撃を研究し、最善の方法で打ち方を決める村上宗隆選手には、満足という文字はありません。
連続打席本塁打記録が途切れた試合後には「次は6打席本塁打を目指したい」と新たな挑戦も見据えていました。
その村上宗隆選手流の打撃がこれからさらに進化する時に、また世界を驚かせる活躍を見せてくれるのでしょうね。
とてもワクワクします。