2022年より、プロ野球では出場機会に恵まれない選手の活躍のチャンスを増やす目的で現役ドラフトが始まりました。
いつ開催されたかというと、第1回・第2回ともに12月前半に行われています。
現役ドラフトとは、様々なチーム事情により出場機会の少ない有望選手を他球団に移籍させることでチャンスを増やし、埋もれかけた才能を発揮させるシステムです。
かつて巨大戦力と言われ続けた読売ジャイアンツで二軍に甘んじていた選手が、他球団への移籍を機に成績が急上昇するなど、こういったトレードには数多くの事例がありました。
また、他球団を戦力外となった選手を獲得し、チャンスを与え活躍させる、名将野村克也監督の野村再生工場も有名ですね。
いつの時代でも、このように環境を変えることで選手はチャンスが増え、その能力を発揮できることが大いに期待されます。
現役ドラフトはこのような選手の発掘には最適な制度ですね。
今回は、現役ドラフトについて、いつ・どのように行われているか、またそのメリット・デメリットについて解説します。
プロ野球の現役ドラフトには対象外となる選手もいる
現役ドラフトは、日本シリーズ終了後の12月に行われています。
前もって各球団から提出された2名の選手が指名対象となります。
また、以下の選手は現役ドラフトからは対象外となります。
・複数年契約をしている選手
・年俸5000万円以上の選手(1名のみ年俸5000万円以上1億円未満の選手を対象にできる)
・FA権を保有、またはFA権を行使したことがある選手
・育成契約の選手
・前年のシーズン終了翌日以降にトレードで入団した選手
・シーズン終了後に、育成契約から支配下契約となった選手
なお、2023年に行われた第2回現役ドラフトからは、年俸5,000万円以上1億円未満の選手を出した球団は、プラスで年俸5000万円未満の選手を1名追加するということになりました。
予備抽選1位の球団から指名開始。選手を指名された球団に指名権が移っていく
現役ドラフトの流れを説明します。
まず、各球団が獲得したい選手1名に投票(予備指名)を行います。
その中で、最も多くの票を集めた選手の所属球団が1番目の指名権を得ます。
指名権を得た球団が予備指名の選手を獲得し、次の指名権は選手を指名された球団に移ります。
同じ手順で、12球団が1人ずつ選手を獲得した時点で1巡目が終わります。
途中で、すでに選手を獲得している球団に再度指名権が移った場合は、予備投票の順位や、ウェーバー(シーズンの順位が下の球団)によって次の指名権を得る球団を決めます。
1巡目では、すでに他球団に獲得された選手や、獲得済み選手と同じ球団の選手を指名することはできません。
1巡目終了後、今度は指名順を逆にして2巡目の指名を行います。
なお、各球団は1巡目のみで指名を終了することもでき、2巡目指名に参加した球団のみで行われます。
第1回現役ドラフトの実際の流れを順を追って詳しく解説!
2022年12月9日に実施された第1回現役ドラフトを例に、どの選手がいつ・どのような流れで指名されたのか、その過程を詳しく見ていきます。
予備投票では日本ハムが最も票を集め、指名権第1位となります。
日本ハムが西武の松岡選手を指名し、指名権は西武へ。
西武が阪神の陽川選手を指名し、指名権は阪神へ・・と続きます。
指名権第4位となったソフトバンクが日本ハムの古川選手を指名したので、すでに指名を終えている日本ハムではなく、予備投票順により広島が次の指名権を獲得。
広島が巨人の戸根選手を指名。
このように進み、最後指名権最下位のヤクルトが、残っていたロッテの成田選手を指名し、1巡目が終了しました。
その後、2巡目に参加する球団がなかったため、第1回現役ドラフトは1巡目指名のみで打ち止めとなっています。
阪神大竹・中日細川が大躍進。第1回目にして大きな成果が見られた
第1回現役ドラフトで福岡ソフトバンクホークスから阪神タイガースに移籍した大竹耕太郎選手は、それまで5年間通算でわずか35登板・10勝の投手でした。
しかし、阪神タイガースに移籍すると、先発の柱として移籍1年目から12勝2敗の好成績を残します。
オールスターにも出場し、阪神タイガース18年ぶりのセリーグ制覇と、38年ぶり2度目の日本一に大きく貢献します。
現役ドラフト1回目にして、これからも語り継がれる成功例となったのではないでしょうか。
また、横浜DeNAベイスターズから中日ドラゴンズへ移籍した細川成也選手は、横浜での6年間は伸び悩んでいましたが、中日では140試合に出場し、24本塁打・78打点をマークします。
6月には4番を任されるなど、貧打に苦しんでいた中日打線の核となり、大竹耕太郎選手と並んでオールスターにも出場しました。
いずれも現役ドラフトの理念通り、環境を変えたことで出場機会を得て、能力が開花した好事例ですね。
現役ドラフトと戦力外、人的補償のプロテクト外。微妙に絡み合う制度の意図
一方で、第1回ドラフトで移籍した12人の選手のうち、半数の6人がわずか1年で戦力外となりました。
これらのことから、現役ドラフトに名前を挙げられる選手は、事実上の戦力外なのではという声もあります。
そもそも、チームの戦力として計算している選手を現役ドラフトにかけることはありません。
それでも、他球団であれば、くすぶっているその素質を発揮できる機会があるのではという期待から、現役ドラフト対象選手となることが理想です。
同じような扱われ方として、例えばFA選手を獲得した際の人的補償などもあります。
FA宣言をした選手の移籍先が決まると、誰が人的補償に指名されるのか、その球団の周辺が騒がしくなります。
人的補償の対象外となるプロテクトから外れた選手の気持ちははかり知れませんね。
このように、現役ドラフトの取り上げ方によっては、選手にとってマイナスのイメージとなってしまうリスクがあります。
もちろん、交換トレードや人的補償同様、選手は拒否することはできません。
制度のさらなる理解と熟成が求められます。
プロ野球の現役ドラフトはいつ?【まとめ】
今回は、現役ドラフトはいつ、どのように開催されるのかについて、現時点でのその成果も含め詳しく紹介しました。
選手の出場機会の確保や、環境を変えて活躍できる選手を増やすことを目的とし、実施されている現役ドラフト。
2023年も12月8日に第2回目の現役ドラフトが実施されました。
ファンとしても、どの選手の名前があがるかによって、嬉しさも悲しさも入り乱れます。
移籍した選手たちが、今後どのような活躍を見せるかによって、この現役ドラフトの存在価値も高まってくるのではないでしょうか。
現役ドラフトはまだ誕生したばかりの制度なので、今後も様々な仕組みが整備されるはずです。
球団が自分たちのチームの利益ばかりを優先しないよう、改めてプロ野球界全体を発展させるという思いが大切です。
そして選び抜かれプロ野球選手となった選手一人ひとりの将来を考えた、素晴らしい制度に育つよう、期待したいと思います。