プロ野球の試合では、勝つための選手起用が大きなカギを握ります。
特に、現代のプロ野球ではピッチャーの継投策がとても重要です。
一昔前のプロ野球のように、大投手が1試合完投するということは珍しくなり、相手打者や球数などによって細かく継投する戦法がどのチームでも主流となっています。
基本的に、ベンチ入りしている選手であればピッチャーは試合中何人でも交代することができます。
ルールに従えば、他のポジションに移した後に再度登板させることも可能です。
ただ、ピッチャーの交代ルールはかなり細かく設定されていて、時には選手や監督だけでなく審判まで誤認して試合を進めてしまうこともある程です。
今回は日本のプロ野球におけるピッチャーの交代ルールを中心に、詳しく調べてみました。
ピッチャーの交代ルール!基本的に1人の打者との対戦を終えてから
プロ野球の先発ピッチャーの交代については、野球規則に次のように定められています。
・ただし先発投手が負傷や病気で以後の投球ができないと審判が認めた場合は交代できる
つまり、ケガなど緊急事態でない限り、最低でも1人の打者との対戦を終えるまでは交代できないということになります。
また、リリーフピッチャーについては同じく野球規則に次のように定められています。
・救援投手が負傷や怪我で投球できなくなったときは交代できる
基本的には先発ピッチャーと変わりませんが、リリーフピッチャーの場合は、前のピッチャーが一人の打者と対戦中に交代することもあり、その打者との対戦を終えた時点で交代が可能となります。
ピッチャーの交代は、監督が審判に告げ、審判がこれを承認して成立
ピッチャー交代の手順は次の通りです。
・監督が審判にピッチャー交代を告げ、了承される
・監督またはコーチがマウンドへ行き、ピッチャーへ交代を告げる
・前のピッチャーがベンチへ下がり、次のピッチャーがマウンドへ上がる
・監督またはコーチがベンチへ下がる
例えば、ピッチャーが自分から交代しにベンチへ戻ることは認められません。
また、監督がピッチャー交代を告げる際に、同時に打順を伝える必要があります。
必ずしも前のピッチャーの打順にそのまま入れるだけではなく、打順の巡り合わせなどを考慮し、他の選手と入れ替えたりすることもあります。
なお、ピッチャー交代はプレー中でなければ、どのタイミングでも可能です。
監督はタイムを要求し、その間にピッチャーの交代を行います。
監督・コーチが2度マウンドに行くと交代に。ただし細かな決まりごとがある
監督またはコーチがマウンドへ行く回数は、一人の投手に対し、1イニング2回までとなります。
マウンドに2回行ったときは自動的にピッチャー交代となります。
このルールはファンの多くがよく知っており、2回目に監督またはコーチがベンチから出てくると「ピッチャー交代だ」とすぐわかりますね。
なお、ケガなどの緊急事態にマウンドへ行くことは、審判の承諾を得られれば回数に含まれません。
ただ、ここにも細かなルールがあり、
・攻撃側がその打者に代打を出した場合には、監督またはコーチは再びその投手のもとへ行っても良いが、その投手は試合から退かなければならない
というように、監督またはコーチがベンチに引き上げるタイミングなどによって、ピッチャー交代の解釈が変わってきます。
このルールに関しては度々監督・コーチや審判の間でルールの誤認が生じています。
ピッチャーが他のポジションに移ることや再登板することも条件によっては可能
ピッチャーが交代した後に他のポジションについたり、そこからまたマウンドに戻ることも、ルールに従えば可能です。
・選手交代でピッチャーが別の守備についた場合、同じイニング内ではもう1度ピッチャーにのみ、守備変更することができる
となります。
同じイニング内だと、投手→野手→投手の変更は可能ですが、再登板は1回のみとなり、その後また野手へ戻ることはできません。
同じく投手→内野→外野のように、降板後複数のポジションについた場合も、イニング内の再登板はできません。
ただ、これらはイニングをまたげば、認められます。
ややこしいですね。
ルールを熟知した野村克也監督のレアな投手継投にファンも歓喜
名監督として名高い野村克也さんは、過去にこのようなピッチャーの交代ルールをうまく活用した采配がありました。
ヤクルトスワローズ監督時代、先発投手の右投げの郭建成選手は、先頭打者たった一人にだけ投げ、左腕の加藤博人選手に交代しました。
対戦相手の広島東洋カープがスターティングメンバーに偵察要員を入れ、試合開始後左打者に交代したことを逆手に取った秘策でした。
阪神タイガース監督時代には、遠山・葛西スペシャルという珍技が有名です。
最初の左打者に左腕の遠山奨志選手。
次の右打者の時には遠山奨志選手が一塁手へまわり、右腕の葛西稔選手が登板。
さらにその次の左打者には再度遠山奨志選手を登板させ、葛西稔選手が一塁手へ・・と、2人の投手が投手と一塁手を行き来する変則的な継投策でした。
野村克也監督曰く、「苦肉の策」だったようですが、交代ルールを的確に解釈することで、戦略的にも有利になる事例ですね。
当時はこの作戦にファンも大いに盛り上がったものでした。
ピッチャーの交代ルール【まとめ】
現代のプロ野球においては、ピッチャーの継投がその試合の行方を大きく左右します。
試合中も、ピッチャー交代のシーンは何度も目にする光景です。
ピッチャーの交代ルールには細かいルールが決められており、そのルールを理解しておかなければ、戦略が大きく狂ってしまいます。
また、野村克也監督のように、ルールを熟知することで、相手の上を行く戦法を駆使することもできます。
ルールをすべて正確に解釈することは素人では難しいかもしれませんが、それにより、プロ野球観戦の楽しみ方も深まることでしょう。