アンダースローは、普通は投球する時に上から下へ振り下ろす腕を、逆に下から上に振り上げて投げる投げ方です。
体を折り曲げて深く沈ませてから投げる球は、浮き上がるような軌道で打者に向かっていくため、アンダースローの投手をサブマリンと呼ぶこともあります。
変則的とも感じられるこの投げ方ですが、これまで数々の有名選手を生み出してきました。
アンダースローの投手ということで、インパクトのある選手が多いですね。
今回はアンダースローでファンを魅了した歴代の有名選手のうち、山田久志選手・渡辺俊介選手・そして現役で活躍中の高橋礼選手を紹介します。
アンダースローの有名選手は?
通算283勝。日本一のアンダースロー、山田久志選手
日本のプロ野球でアンダースローの代表的な有名選手と言えば、阪急ブレーブス黄金時代の大エース、山田久志選手です。
山田久志選手は秋田県立能代高等学校時代にアンダースローとなり、社会人を経て1967年ドラフト1位で阪急ブレーブスへ入団します。
アンダースローでありながらも、若い頃は速球で押す本格派の投球が信条でした。
1971年の読売ジャイアンツとの日本シリーズで、自信をもって投げ込んだ速球を王貞治選手にサヨナラ本塁打を打たれたことが、自身の投球スタイルを変えるきっかけとなります。
1975年に、同じアンダースローのベテラン投手足立光宏選手からシンカーを学びます。
すると、翌年には26勝をあげ、見事にスタイルチェンジに成功しました。
その後も長く第一線で活躍を続け、アンダースローの投手としては現在でも最多の通算283勝をあげます。
さらにMVP3回、最多勝利3回、最優秀防御率2回獲得。
1975年から1986年まで、プロ野球記録となる12年連続開幕投手を務めました。
アンダースローに限らず、歴代のプロ野球の投手の中でも、秀逸な選手に違いありませんね。
ミスターサブマリン渡辺俊介選手の球は地上3cmの高さから浮き上がる!
平成のプロ野球でアンダースローの代表格と言えば、ミスターサブマリンと呼ばれた千葉ロッテマリーンズの渡辺俊介選手です。
中学生の頃からアンダースローで投げていましたが、國學院大學栃木高等学校時代は、後に西武ライオンズに入団する小関竜也選手の控え投手に甘んじていました。
大学・社会人時代に力を蓄え、2000年ドラフト4位で千葉ロッテマリーンズに入団します。
プロ入り後は主に先発投手として起用され、2004年12勝、2005年15勝、2008年13勝と3度の二桁勝利を挙げています。
渡辺俊介選手のアンダースローは世界一低いと言われ、地上約3cmの高さで球をリリースします。
他の投手とは全く異なる軌道で投げられるため、打者はタイミングを取りにくくなります。
ただ、その独特のフォームであるがゆえに、稀に右手や右膝を地面に擦ってしまうこともあるようです。
そのため、投球フォームをより安定させる必要があり、下半身の強化は並の投手以上に必要だったようですね。
それでも、その独特の投球スタイルで現役通算13年、87勝は立派な成績です。
パリーグからアンダースローの少ないセリーグへ。活躍を期する高橋礼選手
現役のアンダースローの有名選手としては、福岡ソフトバンクホークスで活躍し、2024年から読売ジャイアンツでプレーする高橋礼選手がいます。
高橋礼選手は身長が188cmの長身でありながらも、アンダースローの投手として活躍しています。
福岡ソフトバンクホークス入団2年目の2019年には先発として12勝を挙げ、日本シリーズでも活躍しチームの日本一に貢献。
その年のパリーグ新人王にも輝きました。
翌2020年にはリリーフに転向し、勝利の方程式の一角として52試合に登板し、23ホールドを記録します。
しかし、年々成績を落とし、2023年シーズンオフに読売ジャイアンツへ移籍します。
アンダースロー投手の少ないセリーグでどこまで通用するか、期待が高まりますね。
アメリカでは大きな事故も!?アンダースローには様々なデメリットがある
最近では絶滅危惧種と言われ始めたアンダースロー。
アンダースロー自体は古くから存在する投げ方でしたが、クイックモーションが難しく盗塁されやすい点や、コントロールミスを生じやすくデッドボールが多いなどのデメリットがあります。
かつてアメリカでは、1920年に、クリーブランド・インディアンスのレイ・チャップマン選手が、ニューヨークヤンキースのアンダースロー投手カール・メイズ選手から受けたデッドボールで亡くなるという事故が発生します。
この事故によってプロ野球でアンダースロー自体が禁止されることはありませんでしたが、その投げ方の危険性が問われ、以後しばらくはアンダースロー投手が減ったと言われています。
アンダースローよりも使い勝手の良い投げ方のサイドスロー
日本では、元々アンダースローだった投手が、コントロールの向上や、変化球をマスターするために、腕を少し上げてサイドスローに変えることがよく見られます。
また、山田久志選手や渡辺俊介選手のように上体を倒して投げる投球フォームと異なり、上体を立てた投球フォームで腕だけ下げて投げる場合の多くは実際にはサイドスローとなります。
かつて南海ホークスの大エースとして活躍した杉浦忠選手の投げ方は、「手首を立てたアンダースロー」と呼ばれ、リリースの瞬間に手首を返す「ピシ!」という音が、相手ベンチまで響いたと言われています。
ただ、腕が肩から下に下がることはなく、厳密には杉浦忠選手もサイドスローだと言われています。
アンダースローの有名選手【まとめ】
変則的投手の代表とも言えるアンダースローですが、現在有名選手と言える選手は減少しています。
ただ、少ないアンダースローの投手は希少価値があり、打者を困惑させるという意味でもまだまだ貴重な戦力となりうる存在ではないでしょうか。
山田久志選手のように、アンダースローで一時代を築いたピッチャーもいれば、渡辺俊介選手のように、その個性でファンを魅了する選手もいます。
様々なタイプの投手がマウンドに上がり、球場を盛り上げてくれることが、また野球観戦の楽しみの一つとなることでしょう。