フォークボールとスライダーは、いずれも古くからプロ野球で多くの投手が使ってきた変化球です。
野球にそれほど詳しくない人でも耳にしたことはあるのではないでしょうか。
フォークボールとスライダーには大きな違いがあります。
フォークボールは縦の動きが大きく、スライダーは横の動きが強い投球です。
また握り方も、2本の指を大きく広げて挟むフォークと、2本の指を揃えて添えるスライダーとで大きな違いが見られます。
今回は、フォークボールとスライダーの違いについて、それぞれの球の特徴を踏まえ、詳しく解説します。
フォークボールとスライダーの違い
フォークボールは大きく沈む球で、打者から三振を奪う
フォークボールは、球の縫い目の外側で人差し指と中指の間にボールを深く挟み、ボールの回転を抑えつつ、直球と同じ腕の振りで投げます。
縫い目には指を掛けないのがコツです。
球は打者の手元で急激に大きく沈み、それによって打者から空振りが取れる球です。
いわゆる沈む変化球というのは他にもありますが、フォークボールはいかに大きく鋭く落ちるかが生命線となります。
そのため、打たせて取るというよりは、三振を取りに行く球としてよく使われています。
基本的には低めのストライクゾーンからボールゾーンへ落とす球です。
よく打者がワンバウンドするような投球に手を出して三振することがありますが、フォークボールはそれくらい大きく落ちるということがわかりますね。
後ろに逸らしてはならない!甲斐拓也選手はお化けフォークを体中で止めた
一方、フォークボールはその落差から、暴投や捕逸につながるリスクもあります。
特に、三塁にランナーがいる場合に投げるフォークボールは、その変化の精度はもちろん、失敗を恐れない勇気も必要です。
フォークボールの落ち損ないの球は打者にとっては絶好球となり、ランナーがいる場面での暴投や捕逸は失点につながります。
福岡ソフトバンクホークスで活躍し、現在はメジャーリーグのニューヨークメッツ所属の千賀滉大のフォークボールは、その異次元の変化が特徴で「お化けフォーク」と呼ばれています。
現役の選手の中でも秀逸なフォークボールの使い手ですね。
千賀滉大選手が日本にいた頃の女房役が、現在も福岡ソフトバンクホークスの正捕手を務める甲斐拓也選手です。
甲斐拓也選手のブロッキングはおそらく球界一ではないでしょうか。
絶対に投球を後ろに逸らさないと、体中でワンバウンドの球を受け続けるその男気がプレーに現れています。
千賀滉大選はそんな甲斐拓也選手を信頼しているからこそ、お化けフォークを連投し、三振の山を築くことができます、
2人は2020年には最優秀バッテリー賞に選出されますが、納得ですね。
鋭く横滑りするスライダーは、今でも多くの投手が持ち球としている
スライダーは主に横方向に変化する球ですが、その使い方によって利き手の反対の方向に横滑りする横スライダーと、縦に沈む縦スライダーに分かれます。
基本的な投げ方は、人差し指と中指を揃えて球に掛け、ストレートよりも少し外側にずらして握り、手首を捻らずに中指に力を加え投げます。
それにより、ストレートに近い軌道で、打者の手元で鋭く曲がる球となります。
カーブのような変化球とは違い、捻ったり抜いたりする動きがなく、速球に近い握り方と腕の振りで投げられます。
そのため、変化球の中でも、スライダーは比較的マスターしやすい球とされており、現在に至るまで数多くの投手がこのスライダーを持ち球にしています。
日本初の完全試合に導いたスライダー、1mも曲がったと言われる高速スライダー
日本のプロ野球でスライダーの始祖は、東京巨人軍(読売ジャイアンツ)の藤本英雄選手です。
藤本英雄選手は、戦後間もない頃、キャッチボールの最中にこの球をたまたま生み出したと言われています。
スライダーを完全にマスターした藤本英雄選手は、1950年には日本初の完全試合を達成しています。
近年ではヤクルトスワローズの伊藤智仁選手の高速スライダーが有名です。
伊藤智仁選手は、150kmを超える速球と、真横に鋭く曲がる高速スライダーを武器に活躍。
その高速スライダーは、すごい時には1m近く曲がったという噂が出るほどの精度です。
入団1年目は故障で前半戦のみの出場でしたが、防御率0.91という驚異的な成績で強烈なインパクトを残し、新人王に輝きます。
肩や肘の故障により活躍期間が短かったことは惜しまれますが、当時の正捕手古田敦也選手をはじめ、現在でも多くの人から「プロ野球史上最高のスライダー」と称賛されています。
フォークボールやスライダーの投げすぎは故障につながりやすい
フォークボールとスライダーはそれぞれ球の軌道や握り方の違いがあります。
一方で、ともに故障を発生するリスクがある変化球でもあります。
フォークボールは、その独特な握り方から肘や肩の関節部に過度な負担がかかることがあります。
スライダーは横方向へ変化をつけるために、肘の内側の筋肉や骨に過度に負担がかかりやすいと言われています。
フォークボールやスライダーを多用する選手は、肩や肘の故障に見舞われ、手術を受けるケースはよくありますね。
ケガを防ぐためには、事前のウォーミングアップとストレッチや正しい投球フォーム、過度に使用しないこと、投げた後の適切なクールダウンなどを心がけておくことが大切です。
フォークボールとスライダーの違い【まとめ】
現在でも多くのプロ野球選手が武器とするフォークボールとスライダーの違いについて、紹介しました。
変化球の中でも良く知られているため、歴代のプロ野球選手でもフォークボールとスライダーを決め球として使う有名な選手が多くいます。
完成されたフォークボールとスライダーは、打者にとってはわかっていても打てないという、まさに魔球となります。
プロ野球の投手にとって、自分の代名詞となるような魔球を取得することは本望なのではないでしょうか。
これからさらに究極の魔球を駆使する選手が現れることを、期待していきましょう。