投手の投げ方というのは、主にオーバースロー・スリークオーター・サイドスロー・アンダースローの4種類に分けられます。
その中で、一番オーソドックスな投げ方はもちろんオーバースローです。
プロ野球選手に限らず、野球を始めたばかりの子どもに最初に教える投げ方は、間違いなくオーバースローではないでしょうか。
今でも多くのプロ野球選手の投手が、この投げ方をしていますね。
ではオーバースローという投げ方のメリットとデメリットはどこにあるのでしょうか。
今回は、最もメジャーな投げ方であるオーバースローの魅力について詳しく紹介します。
オーバースローのプロ野球選手はなぜ多い?
オーバースローとは上から下へ腕を大きく振り下ろす豪快な投球スタイル
オーバースローとは、上から下に腕を振り下ろす投げ方で、おそらく本格的に野球をやったことのない人でも、通常この投げ方をされるのではないでしょうか。
基本的な投げ方としては、一度テイクバックした腕を頭の上まで振りかざし、反動をつけて一気に振り下ろします。
それにより、球に角度がつき、打者に向かって力強い投球が放たれます。
このような特徴から、特に長身の投手には向いている投げ方と言えるでしょう。
また、腕を振り下ろす投げ方ではありますが、それに伴う下半身の体重移動が重要です。
振りかぶった時に下半身がグラグラすると、球に力が伝わらず、コントロールも定まりません。
軸足にしっかりと体重を乗せ、腕を振り下ろすタイミングで踏み込んだもう一方の足に一気に体重移動します。
それにより、伸びのあるストレートや、キレのある変化球を投げることができます。
投手がよく練習メニューとして走り込みをするのは、スタミナをつけるとともに、安定した投球フォームのために下半身を強靭に鍛える理由があります。
球の角度、速球の投げやすさ、縦の変化のつけやすさがメリット
オーバースローのメリットとして、リリースポイントが高いため、角度のある球を投げることができます。
球に角度がつくということは、打者にとっては上方向から剛速球が襲ってくる感覚になります。
昔から、背の高い投手がプロ野球選手としてスカウトされやすかったのは、背が低いと球に角度がつかないという理由から来ています。
次に、速球が投げやすいということです。
腕を上から下へ振り下ろすその遠心力や反動力が球に伝わることで、より直球にスピードを乗せやすくなります。
また、速球だけではなく、縦の変化もつけやすいことがメリットです。
フォークボールやカーブ、縦に落ちるスライダーなどの変化球はとても有効に使うことができます。
打者にとっては、一瞬消えるように変化したと見えるでしょうね。
打者からはタイミングが取りやすくリリースが見やすい。故障のリスクもあり
もちろん、オーバースローにもデメリットはあります。
まず、他の投げ方と比べると、オーバースローの投手には打者はタイミングが合わせやすいことがあげられます。
これは、子どもの頃からなじみのある投げ方であるとともに、大人になっても数多くのプロ野球選手がオーバースローで投げます。
そのため、打者にとっては球の軌道が読みやすく、投球をとらえるイメージもしやすくなります。
リリースポイントも体から離れているため、打者からは見えやすくなります。
また、その投球フォームから、腕や肩の稼働域も大きくなり、かつ、腕だけでなく上半身を大きく前に曲げて投げるため、腰やひざにも負担がかかりやすく、故障もしやすくます。
一方で、体全体を使わない投げ方は、いわゆる「手投げ」の状態になり、球に力が伝わらず、打ちごろの棒球になってしまいます。
故障をしない体づくり、下半身や体幹のトレーニングが、オーバースローで投げ続ける上ではとても重要なこととなります。
ハマの大魔神は「2階からのフォーク」で打者を圧倒した
オーバースローは最もオーソドックスな投げ方であるため、プロ野球選手にもこれまで多くの有名なオーバースローの投手がいました。
横浜ベイスターズやメジャーリーグで抑えとして大活躍した佐々木主浩選手もその一人です。
最速154kmの速球と鋭く縦に落ちるフォークボールが武器で、ハマの大魔神の異名がピッタリでしたね。
佐々木主浩選手が投げる落差の大きなフォークは「2階からのフォーク」とも言われ、全盛期には、確実に打ち返すことのできた打者はほとんどいませんでした。
佐々木主浩選手の身体特徴は、190cmの長身に、骨格の良さと強い握力、そして故障に強い体です。
まさにオーバースローを投げる条件が揃った稀代の投手と言えるでしょう。
オーバースローより少し腕が下がるスリークオーターが増えている
オーバースローと似たような投げ方として、スリークオーターという投げ方があります。
オーバースローの一つとしてとらえることもありますが、オーバースローよりも少し腕が下がる投げ方です。
実はプロ野球選手でも純粋なオーバースローの投手は少なく、上から投げる投手のほとんどはこのスリークオーターです。
ダルビッシュ有選手や田中将大選手、そして大谷翔平選手の投げ方も厳密にはこのスリークオーターです。
リリースポイントはオーバースローよりもやや低く、サイドスローよりも少し上に位置します。
オーバースローほど体の負担は生じないため比較的投げやすく、バランスの良い投球フォームでコントロールもつけやすくなります。
ただ、スタンダードな投げ方であるがゆえに個性を出しにくく、また、ボールの回転軸が少し横向きになるため、シュート回転をする球になりやすいというデメリットがあります。
オーバースローのプロ野球選手が多い理由【まとめ】
今回は数ある投げ方の代表格であるオーバースローの魅力や、そのメリット・デメリットについて紹介しました。
最近のプロ野球選手はコントロールが重視され、また故障を防ぐために、元々オーバースローだった投げ方をスリークオーター気味に変える選手も増えました。
オーバースローの投手は、本格派の投手というイメージがありますが、そのような投手が少なくなるのは少し寂しいですね。
たまには豪快に腕を大きく振り下ろし、打者をねじ伏せるようなオーバースローの投手もたくさん見てみたいものです。