プロ野球中継を見ていると、ピッチャーが投球前に白い粉を手に付けている仕草を見ることができます。
マウンドのそばに置かれた小さな袋のようなものを手に取り、手のひらの上でポンポンすると、白い粉がフワフワっと舞うのが、テレビ画面を通しても良くわかりますよね。
ピッチャーが投球前に使用する白い粉はロジン、またはロジンバッグと言います。
ピッチャーの手、特に指先は精密なコントロールや、変化球にとっては、とても重要で繊細なパーツです。
ロジンを手に付けることで、適度な滑り止めになる効果があります。
その白い粉をたまにペロッと舐めるピッチャーもいます。
この白い粉は体には悪くないのかなと思ったりもしますが、実際には少し舐めるくらいであれば健康被害はないそうです。
今回はピッチャーの高い技術を支える白い粉・ロジンについて解説します。
ピッチャーの白い粉:ロジンバッグの主成分は松脂
ピッチャーが滑り止めに使用する白い粉はロジンバッグと言います。
ロジンとは松脂のことを指しており、ロジンバッグとは松脂の入った袋、という意味です。
成分は、炭酸マグネシウム80%、松脂15%、その他から成ります。
松脂とは、樹脂や樹木から抽出される物質で、湿気を吸収し、手を乾燥させる作用があります。
これにより、ピッチャーが手に持つボールが滑りにくくなり、握りやすくなります。
ピッチャーはボールをしっかりと握ることができ、投球時の手の動きが安定することでスピンがかかりやすくなり、また変化球や制球力の精度が向上します。
ロジンバッグは、バッターも同じようにバットの滑り止めとして使用することがあります。
メジャーリーグでは1926年から、日本でも昭和40年頃から使用され始める
ロジンバッグは19世紀末頃から使用されています。
その頃は現在とは野球規則も異なり、様々な手段でピッチャーやバッターの滑り止めの対策がなされていました。
ロジンバッグはその方法の一つだったようです。
選手たちが工夫を凝らす中で、徐々に滑り止めの主役として定着して来たわけですね。
使用され始めた正確な時期は不明のようですが、メジャーリーグでは1926年から正式に使用が認められました。
日本では昭和40年あたりにアメリカから輸入され、使われ始めたという見方が一般的です。
ロジンをつけた手を舐めるのは、ボールにロジンの白い粉をつけないため
ピッチャーがマウンド上で行う動作に対しては、野球規則で細かく規定されています。
特に、ピッチャーがボールに別の物質を付けたり、意図的に傷を付ける行為は反則球として、ペナルティが課せられます。
使用が認められているロジンバッグも、球に直接付けてはいけません。
ピッチャーがロジンバッグを使用した後、指をペロリと舐める仕草をすることがありますが、これは手に付いた白い粉が球に付着しないようにする行為です。
厳密には唾液も球に付けてはいけないため、審判の裁量で反則とみなされてしまうこともあります。
ピッチャーは反則すれすれの行為で、自分の最大限の投球技術を引き出すための細かな工夫をされているのがわかります。
ピッチャーによっては、大量にロジンを付ける選手もいれば、一度手に付けたロジンに息をかけて吹き飛ばす選手もいます。
同じ滑り止めでも、選手によって扱い方が様々なのは面白いですね。
ロジンバッグは、投手板の後ろに置くことが決められている
ロジンバッグは通常、投手板の後方に置くことと定められています。
ただ、ボールと同じ白色のため、置いた場所によっては、ピッチャーの投球と被り、バッター側からボールが見えづらくなることもあります。
特に、アンダースローのピッチャーの場合、ボールをリリースする角度とマウンド後方に置かれたロジンバッグが重なりやすく、バッターは一瞬ボールを見失う可能性があります。
そのため、さらに細かな置き場所の規定が検討されているようです。
また、屋外球場で雨の日に行われる試合では、ピッチャーが後ろポケットに入れることもあります。
雨天時の試合では、ピッチャーがお尻の横をまさぐるような動きが見られますが、これはポケットに入れたロジンバッグに触れているということになります。
ロジンは大量に滑め過ぎなければ健康被害はない。ただし乾燥には要注意
2023年に行われたWBCで、大谷翔平選手はボールにロジンがつかないよう、ロジンを使用した後に手をペロリと舐める行為をたびたび行い、SNSなどでも大きく取り上げられました。
以前からそのような行為をするピッチャーは他でもよく見かけられました。
ロジンは舐めても健康的に大丈夫なものなのでしょうか?
ロジンは天然の樹脂から作られており、特に毒性があるわけではありません。
ただし、ロジンには乾燥効果があるため、舐めすぎると口の中が乾燥する可能性があります。
また、一部の人がアレルギー反応を示すことがあります。
いずれにしても、過度に舐めることは控えた方が良さそうですね。
ピッチャーの白い粉は何?【まとめ】
プロ野球のピッチャーが投げる前に行う一連の動作は、儀式のようなもので、それぞれのピッチャーが集中力を高めるため、ルールの範囲で独自の動きをします。
ロジンバッグを使用するのも、この一連の動作に含まれます。
集中力を高めつつ、ロジンバッグを手の上でポンポンと叩き、その白い粉が風に舞う光景はとてもかっこ良く映りますね。
ピッチャーによってはパフォーマンスの一つにしている人もいるようです。
ロジンバッグは野球だけでなく、重量挙げやゴルフ、ボウリングなど、他のスポーツでも使われています。
一見地味な存在ですが、選手の能力を最大限に引き出す大事な役割を担います。
たまにはこういったものにも注目してみると面白いですね。