昨今のプロ野球では、新しい球種が多く生み出され、中にはあまりなじみのない呼び方の変化球も耳にします。
その中で、ツーシームという球種は、元々メジャーリーグでストレートと同じ扱われ方をしていた球です。
日本ではそれまで「クセ球」と呼ばれてきました。
しかし、打者を打ち取ることに長けたこの球種を日本人メジャーリーガーが意識して使うようになったことで、日本のプロ野球でも変化球の一つとして浸透してきました。
今回は、かつてはクセのある直球と言われていた現代の魔球ツーシームについて、詳しく解説します。
野球の球種「ツーシーム」はシュート回転で少し沈む変化をするクセ球
ツーシームとは、シュート方向に小さく変化して少し沈む変化球です。
ツーシームの名前の由来は、投じられた球が1回転する間に縫い目(シーム)が2回見えることから名づけられました。
ちなみに、フォーシームは、同じく1回転する間に縫い目(シーム)が4回見えることから名づけられ、通常は単純にストレートと呼ばれることの多い球種です。
ツーシームは速球が微妙に変化するクセ球で、シュート回転がかかるストレートといったところでしょう。
通常は球の縫い目に沿って指をかける握り方で、直球と同じ投げ方をします。
投手の利き手方向に曲がるツーシームで、バットの芯を外す
ツーシームの軌道はその投球スタイルによって様々ですが、一般的に知られているのは、利き手方向に曲がるツーシームです。
直球とあまり変わらない球速で、右打者の内角に少しだけ曲がったり、沈んだりします。
それにより、右打者はバットの芯をグリップ側に外され、詰まらされます。
左打者は逆にバットの芯を先端側に外され、ボテボテの内野ゴロに打ち取られます。
ツーシームはある程度の球速があることで、打者は見極めが難しく、打ち損じも多くなります。
テレビ中継などで見ていると、ほとんどストレートとの差がわからないくらいのツーシームもありますね。
中には、ツーシームのような変化球をシュートと呼んでいるピッチャーもいれば、シュートのようなボールをツーシームとして投げているピッチャーもいるようです。
黒田博樹選手のフロントドアはメジャーリーガーを翻弄した!
ツーシームの使い方として最も一般的なのは、打者の内角を攻めて詰まらせ、ボテボテの内野ゴロを狙うものです。
その使い方として、打者の内角ボールゾーンからストライクに入ってくるフロントドア、外角からストライクゾーンに入れるバックドアがあります。
広島東洋カープのエースとして君臨し、メジャーリーグのニューヨークヤンキースでも活躍した黒田博樹選手は、フロントドアを駆使したツーシームにより、メジャーリーガーを翻弄しました。
右投手の左打者に対するツーシームの一般的な使い方は、外角からボールゾーンに逃げていく軌道です。
しかし、パワーのあるメジャーリーガーは、外角低めのツーシームでも踏み込んで打ち、スタンドまで運んでしまいます。
黒田博樹選手はその対策として、フロントドアに磨きをかけました。
また黒田博樹選手はその握り方も独特で、人差し指だけを縫い目に沿うようにかけ、その力の入れ具合によって曲がり幅を微調整していました。
フロントドアは、わずかなコントロールミスでデッドボールになりやすく、緻密な制球力が求められます。
黒田博樹選手はその能力を十分に有していたということになり、まさに真のメジャーリーガーではないでしょうか。
東浜巨選手から亜細亜大学の後輩につながれる亜大ツーシーム
最近では、亜細亜大学野球部出身の投手がツーシームと称して投げる球種を、亜大ツーシーム(亜大ボール)と呼ぶことがあります。
一般的なツーシームは、ストレートに近い球速で小さく変化させ、ゴロを多く打たる半面、空振りは少ないという特徴があります。
一方、亜大ツーシームはフォークのような握り方で、打者の手元で鋭く沈むため、空振りを取れる球種となっています。
横浜DeNAベイスターズの守護神山崎康晃選手がこの球種を「ツーシームだ」と言ったことで亜大ツーシームが注目されるようになりました。
元々は亜細亜大学の先輩である福岡ソフトバンクホークスの東浜巨選手から教わったとのことです。
当の東浜巨選手は、この球を一貫して「シンカーだ」と言っているようです。
他にも、同じ亜細亜大学出身の広島東洋カープ九里亜蓮選手・薮田和樹選手なども、東浜巨選手から教わったこの球を「ツーシーム」として独自に改良し、それぞれが独特の投げ方・軌道を生み出しました。
皆が口をそろえてツーシームと呼ぶこれらの球が千差万別な変化をすることで、亜大ツーシームの謎をより深めることとなりました。
亜細亜大学野球部という世界から派生した特殊な変化球。
一つの変化球にまつわる話としてはとても興味深いエピソードですね。
野球の球種のツーシームについて【まとめ】
今回は日本のプロ野球でも使い手が増えてきたツーシームについて、詳しく紹介しました。
基本的にツーシームは大きな変化で積極的に三振を取るための変化球ではありませんが、絶妙なシュート系の変化で打者の打ち損じを招きます。
三振をとるよりも球数が抑えられるので、先発投手のように長いイニングを任される投手にとっては、とても便利で有効的な武器となりますね。
ストレートに近いため比較的コントロールがしやすく、投球の幅を広げる変化球です。
投手として打たせて取るピッチングを心がける上では、ツーシームはぜひともマスターしておくべき球種ではないでしょうか。