チェンジアップという変化球をご存じでしょうか?
チェンジアップとは、速球と同じ腕の振りから投げる遅いボールです。
主に速球との速度差を利用して、打者のタイミングをずらすために投げられます。
速球と同じ腕の振りで投げるため、打者は速球に合わせスイングをし始め、気づいた時には空振りをしてしまいます。
元々はアメリカにおけるスローボール全般を指していたようで、現在でもタイミングを外す球を総じてチェンジアップと呼ぶことがあります。
そのため、握り方や変化の仕方も、投手によって微妙に違いがあるようです。
日本国内プロ野球でも、これまでチェンジアップを投げるすごい投手が何人も存在しました。
今回は日本でチェンジアップを投げていたすごい投手を紹介します。
チェンジアップのすごい投手
被打率.143。日本を代表するチェンジアップの名手
福岡ダイエーホークスや読売ジャイアンツで活躍した杉内俊哉選手は、日本を代表するチェンジアップのすごい投手として名前をあげることができるでしょう。
杉内俊哉選手の特徴は、ゆったりとした投球フォームから放たれる快速球と、同じ腕の振りから繰り出されるチェンジアップです。
2009年頃にマスターしたチェンジアップは、この年に被打率は.143を記録するなど、打者にとっては最も打ちにくい変化球として知られるようになりました。
安定した投球フォームから、様々な球速のストレートや多彩な変化球を投げ込み、打者を手玉に取るその投球スタイルは、打者にとっては狙い球を絞りにくく、タイミングをとりにくい典型的な投手です。
一見、淡々と投げているように思えるその投球フォームですが、リリースの瞬間に力を凝縮することが、その魔球を生む秘訣とのことです。
杉内俊哉選手のマウンドさばきを見ていると、その意識が良くわかる気がしますね。
すべての球が決め球になる最高級の技巧派金子千尋選手
オリックスバファローズでエースとして活躍し、晩年は北海道日本ハムファイターズでもプレーした金子千尋選手。
現役当時、持ち球のすべてが決め球になると言われた最高級の技巧派投手です。
それだけでもすごい投手ですね。
金子千尋選手の特徴はまず最高154kmの速球です。
それに、カーブ、スライダー、カットボール、ツーシーム、シンカー、チェンジアップなどを投げ分けます。
特に、速球と同じ腕の振りから放たれるチェンジアップに打者が困惑します。
金子千尋選手によると、中指と薬指でストレートを投げるイメージで腕を振り下ろすとのことで、打者はその投球フォームから球を見極めることがとても困難です。
ただでさえすべての球が一級品であるのに、さらに見極めが難しいチェンジアップを交えることにより、打者を打ち取るバリエーションが大きく広がりますね。
メジャーの夢を掴んだ松井裕樹選手
楽天イーグルスの守護神、松井裕樹選手もチェンジアップを使う代表的な選手の一人です。
桐光学園高校時代、甲子園で1試合22奪三振の記録を達成した時は、ストレートとスライダーが武器の投手でしたが、プロに入ってからチェンジアップを習得します。
もともと一級品だったスライダーにチェンジアップが加わったことで、さらに投球術に磨きがかかります。
松井裕樹選手によると、チェンジアップのお手本は同じパリーグで活躍した金子千尋選手とのことです。
速球を意識させて、同じ腕の振りで投げるチェンジアップで、打者から多くの空振りを奪います。
2024年からはメジャーリーグのサンティアゴ・パドレスでプレーする松井裕樹選手。
そのチェンジアップがメジャーリーガーにどこまで通用するか、注目です。
20勝を稼いだ井川慶選手
阪神タイガースのエースとして、2003年には20勝を挙げ、チームを18年ぶりのセリーグ優勝に導いた井川慶選手も、決め球としてチェンジアップを多用しました。
多くの投手が一つの魔球を習得するために並々ならぬ努力をします。
しかし井川慶選手の場合は、たまたま投げられるようになったようで、「どうやって投げているのか、自分でもわからない」とのことでした。
そのたまたま投げられるようになったチェンジアップは、ストレートと同じ軌道を通り、打者の手元でスッと落ちる独特のチェンジアップとなりました。
井川慶選手は2007年からメジャーリーグ・ニューヨークヤンキースへ移籍しますが、アメリカでは思うような成績を残せませんでした。
多くの野球評論家が、アメリカで成功しなかった原因としてチェンジアップの制球力を上げています。
本人も、日本人の打者がミスしてくれる独特のチェンジアップが、アメリカの打者に見極められてしまったことが不調の原因の一つと分析しています。
チェンジアップのすごい投手【まとめ】
今回は日本のプロ野球で、チェンジアップを投げる代表的なすごい投手をピックアップし紹介しました。
共通して言えるのは、同じ投球フォーム・同じ腕の振りから投げることで、打者のタイミングを外し、空振りを取るということです。
元々速球派でならした投手が、決め球として三振を取りに行くときに使ったり、三振が欲しい場面で空振りを取りに行くなど、様々な活用ができる変化球です。
現代のプロ野球は、打者の技術が格段に向上していて、速球一本で長く活躍できる投手は少なくなりました。
その速球を活かすために用いる魔球として、チェンジアップは最適かもしれません。
またこれからもチェンジアップを駆使するすごい投手が現れることが楽しみです。